ゲノム編集とは?健やかな食を守るためにわたしたちができること。

「ゲノム編集」は人工的に遺伝子を操作する技術です。

「ゲノム編集食品」には、2023年8月現在表示義務がありません。
そこで、アイチョイスでは「ゲノム編集」がされていないトマトと、有機栽培のトマトを原料とする加工品に対して、「OKシードマーク」を表示しています。

「OKシードマーク」とは?

ゲノム編集食品は表示義務がないため、私たち消費者は知らない間にゲノム編集食品を食べてしまうことになりかねません。

 

そこで、2021年にゲノム編集されていない種や農産物、加工品に対してマークを付けようと始まったのが「OKシードプロジェクト」です。

アイチョイスのカタログでは、トマトの種子および苗がゲノム編集でないことが確認できた農産物や加工品に、「OKシードマーク」を表示。

 

アイチョイスは「壊していい遺伝子はひとつもない」という姿勢のもと、OKシードプロジェクトに賛同しています。

ゲノム編集とは?

ゲノムとは、生物がもつ遺伝情報の全体を指す言葉。
そしてゲノム編集は、特定の遺伝子を切断する技術です。

特定の遺伝子まで「道案内をする」人工酵素と、遺伝子を「切断する」人工酵素をセットで細胞に入れることで、狙った遺伝子を切断します。

遺伝子には修復機能があり、本来自動で修復されますが、まれに修復ミスが発生。
これを利用して、狙った遺伝子に突然変異を起こす技術がゲノム編集です。

その後交配と選抜を繰り返すことで、都合の悪い変異や人工酵素を取り除き、特定の遺伝子を含まない個体を生み出すことができます。

一般的に知られているのが高GABAトマト。

これはトマトのGABA抑制遺伝子(GABAの増加を抑える遺伝子)を切断することで誕生した、ゲノム編集食品です。

メリットとデメリット

ゲノム編集のメリットは突然変異を狙った箇所で起こせる点です。
特定の遺伝子を変異させることで、その変異した遺伝子の機能を調べることができ、研究としては有用な技術であるといわれています。

 

しかし、これは研究室に限った話。

実際に研究室の外に出しても、問題ないのでしょうか。

 

デメリットとしては、安全性、生態系への影響です。

ゲノム編集でDNAに起こる変化は自然界や従来の品種改良でも起こりえる変化である」として、安全性についても同程度であると判断されていますが、これに疑問の声が上がっています。

 

特定の遺伝子を人工的に変異させているので、その結果、自然界には存在しない新たなアレルゲンとなる物質が発現する可能性が否めません。

 

そして、「1つの遺伝子の機能は1つ」という単純な話ではないため、特定の遺伝子を変異させることによって、生物に想定外の影響が出る可能性も。その結果、環境に適応しきれない生物が誕生するかもしれません。

 

引用:新しいバイオテクノロジーで作られた食品について|厚生労働省医薬・生活衛生局食品基準審査課

000657810.pdf (mhlw.go.jp)

実用化されているゲノム編集食品

世界で販売されているゲノム編集食品は、下記の4品種。

・大豆
・トマト
・トラフグ
・マダイ

なんと4品種のうち、トマト、トラフグ、マダイの3品種が日本の大学で開発され、日本で流通しているものなのです。

実は、ゲノム編集された大豆を手がけたアメリカの企業は、2022年に倒産しました。

この背景には、農家が積極的に栽培しようとしなかったことや、主な販売先であったレストランが、消費者の反対を考えて、購入しなかったことが挙げられます。

さらに、日本では2023年3月20日に、もちもちとした食感を高めたゲノム編集トウモロコシの届け出が受理されました(流通開始時期は未定)。

その他にも、収穫量の多いイネ、雨に強いコムギ、食中毒を起こさないジャガイモなどの研究が進んでいます。

OKシードプロジェクト事務局長の印鑰さんに聞いてみた!

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OKシードプロジェクト事務局長 印鑰智哉(いんやくともや)さん

ブラジルのNGOで活動していた印鑰さん。
ブラジルは世界12位を争う遺伝子組み換え大国なんだそう。

2003年ごろから、ブラジルでは遺伝子組み換え大豆やとうもろこしなどの栽培が大規模化し、人々の健康や環境に大きな被害が出ていました。

この現状を現地で目の当たりにした印鑰さんは「母国の日本では遺伝子組み換えに関する問題について知る機会がないのでは」との危機感から、活動を始めました。

2019年、消費者庁はゲノム編集技術で開発した食品について、食品表示を義務化しないと発表。

これを受け、ゲノム編集ではない作物であることがわかるように「OKシードマーク」を表示しようとする組織が誕生しました。

この組織が、印鑰さんが事務局長を務める「OKシードプロジェクト」です。

ゲノム編集と遺伝子組み換えは同じ技術を使っているの?

編集部

ゲノム編集と遺伝子組み換えは同じ技術を使っているのでしょうか。

どちらの技術も、外来の遺伝子(※)を挿入するので、同じ遺伝子操作技術といえます。

従来の遺伝子組み換えは、挿入した外来の遺伝子が新たな機能を与えるのに対して、「ゲノム編集」は挿入した外来の遺伝子によって、その生物自身が持つ遺伝子を変異させるところに違いがあります。

「ゲノム編集」では、挿入した外来の遺伝子は、交配と選抜を繰り返すことで取り除かれるので、遺伝子組み換えではないとされてしまっているのです。

しかし、「ゲノム編集」によって特定の遺伝子を変異させることで、遺伝子組み換えでは発生しなかった問題が起きる危険性も指摘されています。

印鑰さん

※ゲノム編集で使用する「人工酵素」もバクテリア(細菌)から生成されているため、外来の遺伝子であるといえます。

ゲノム編集食品には表示義務がない理由

編集部

遺伝子組み換え食品は表示義務があるのに、なぜゲノム編集食品には表示義務が無いのでしょうか。

ゲノム編集で起こる遺伝子の変化は、自然界で稀に起きる「突然変異」や従来の「品種改良」でも起こりうる変化であるとしています。

つまり、ゲノム編集の安全性は自然界で起きることと同じなので、表示義務が課せないというのです。

しかし、ゲノム編集では1つの遺伝子を変異させるために、1千万~1億個の人工酵素を細胞に入れます。

そして、自然界で起こりえない変異を作り出すので、自然界で起きることと同じであるとは科学的に言えないのです。

印鑰さん

ゲノム編集食品を広げないためには?

編集部

ゲノム編集を広げないために、私たちにできることはあるのでしょうか。

「食べたくない」という意思表示が大事です。

そして、これを発信していくことでさらに広がっていくと思います。

 

近年、マスメディアでゲノム編集についての情報が発信されることが少なくなってきていますが、みんなで声をあげることで、私たちの食を守ることへと繋がっていくのです。

印鑰さん

消費者の選ぶ権利を守ろう!

ゲノム編集について知る機会があまりない中、ゲノム編集食品の流通が始まってしまいました。

しかし、自然界で起きている突然変異と、ゲノム編集の安全性が同程度であるとは考え難いのではないでしょうか。

 

消費者にはゲノム編集ではない食品を選ぶ権利があります。

アイチョイスで「OKシードマーク」を採用しているのは、消費者の選ぶ権利を守るため。

ゲノム編集について正しく理解して、きちんと自分の意志で選び取っていくことが大切ですね。

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編集担当もえぞー

2022年アイチョイス入協、30代、夫と2人暮らし。
家庭菜園歴8年目で現在、有機栽培に挑戦中です!
前職では農家さんを相手に野菜の栽培指導をしていました。
ナッツは塩茹でした落花生が大好き♪