食品添加物の乳化剤とは?体に悪いの?使用目的や含まれる食品について解説

食品の原材料名に「乳化剤」と書かれている場合、油と水を混ざりやすくする食品添加物が使われています。

パンやお菓子、チョコレートなど、さまざまな加工食品に使用。
今回は乳化剤がなぜ使用されるのか、そして体に悪いのかなどについて解説します。

食品添加物の乳化剤とは

乳化剤とは、乳化・分散・浸透・洗浄・起泡・消泡・離型などの目的で使用される、用途の広い食品添加物です。

水と油のように、本来交わらない原料同士の境界面で作用します。
化学的に製造されるものだけでなく、大豆の種子などから抽出されるものも。

一括名「乳化剤」と表示されることが一般的で、具体的な食品添加物がわからない場合が多いです。
複数の乳化剤を組み合わせて使われることもあります。

パンやマーガリン、ホイップクリームなどに使われていて、日々の食卓で目にすることの多い食品添加物だといえるでしょう。
「乳」の文字が使われていますが、乳由来原料が含まれていない場合もあります。

食品添加物の乳化剤は体に悪いのか?

乳化剤が「体に悪いのでは?」と聞くと不安になりますよね。
日本で使用されている乳化剤は食品衛生法に基づき、国から使用が認められたものだけが使用されており、食品安全委員会により安全性の審査が行われています。

しかし、一部の乳化剤で健康上のリスクがあると報告があるのです。

乳化剤は心血管疾患のリスク増加と関連あり

欧米人の総エネルギー摂取量の30~60%を占めているといわれる超加工品。
超加工品には多くの食品添加物が含まれているといわれています。

フランスの研究では、加工食品に使用される食品添加物の上位10品目のうち、乳化剤が7つ含まれているとの報告も。

乳化剤は身近な食品添加物であるため、知らず知らずのうちに摂取しがちであるといえるでしょう。
Open Food Factsを利用した推定では、食品または飲料会社が提供している食品のうち、約54%が1種類以上の乳化剤を含んでいる事が示唆されています。

そんな乳化剤が心血管疾患のリスク増加と関連している可能性があるとの論文が発表されました。

乳化剤によって腸内細菌の多様性が低下

食の欧米化とともに、わたしたちの食生活は高カロリー・高脂肪食へと変化。
その結果糖尿病や脂肪肝などの生活習慣病が増加しているのです。

その他にも、食生活の変化に伴い、炎症性腸疾患が増加しており、免疫学的に関連が疑われているそう。

ある研究では、乳化剤による腸内細菌叢の変化が、インドメタシン腸炎を増悪させることが明らかに。
乳化剤によって腸内細菌の多様性が低下することで、腸炎を起こしやすい環境を作り出していると考えられます。

安全性が認められており、わたしたちにとって身近な食品添加物のひとつ「乳化剤」ですが、摂取については注意したいですね。

食品添加物の乳化剤の使用目的

乳化剤は主に以下のように食品の味や見た目、品質を整えるために使われています。

チョコレートの口どけをよくしたり、パンの生地を扱いやすくしたりと、実はわたしたちの食事を支えている裏方的な存在です。
以下では、それぞれの具体的な役割を見てみましょう。

乳化

水と油のように本来交わらない原料同士が分離しにくくなるよう、境界面に働きかけるのが「乳化剤」の最も代表的な役割です。
マヨネーズやドレッシングなどで使用されることが多く、なめらかな仕上がりを実現。

起泡

起泡は、液体内に気泡を作りボリュームを持たせる働きです。
ホイップクリームやムースなど、ふんわりした食感を演出するときに活躍します。

油分や水分に加え、空気も入り込むデリケートな工程を、乳化剤を添加することで効率的に製造が可能。
ふわっと軽い口当たりが特徴のお菓子類でも使用されることが多いです。

消泡

余分な泡を消すのが「消泡」の役割。
豆腐やビール、調理時の煮こぼれなど、泡立ちすぎると製造工程や見た目に影響する場合があります。

乳化剤には起泡だけでなく、こうした消泡機能を持つ種類もあるのです。
ちょうどいい泡の量を保つための働きがあります。

分散

分散は、粉末や脂質などの成分を均一に散らす働き。
もし分散がうまくいかないと、ダマになったり沈殿したりして、仕上がりや口当たりが悪くなってしまいます。

乳化剤の界面活性によって、成分同士が均一に混ざり、安定した食品が完成。
冷たい水や牛乳などに溶かす粉末飲料が代表例です。

湿潤・浸透

濡れにくい固体表面を水に濡れやすくしたり、食品内部へ水分や油分を行き渡らせるのが、湿潤や浸透の働きです。

パン生地やお菓子の生地がダマにならずに均一に仕上がったり、チューインガムが歯に付着しなかったりするのは、乳化剤が隠れた力を発揮しているから。
ふんわりとした食感を作り出す効果もあります。

滑沢

「滑沢(かつたく)」とは、表面をなめらかにする作用のことです。
チョコレートやキャンディなどの艶出しに役立ち、見た目をよくするだけでなく、口当たりのよさにも寄与。

乳化剤には表面をコーティングして均一化する働きがあります。

可溶化

本来は溶けない成分を、水や油に溶けたかのようにするのが可溶化。
たとえば、栄養ドリンクやソース類で、油性の成分が白濁せず目立たないのは乳化剤の働きが大きいです。

油性の香料を透明な飲料に加えても、違和感なく乳化剤がサポートします。

洗浄

せっけんや衣料用洗剤など乳化剤の界面活性は、実は「洗浄」にも活かされます。
食品工場の製造ラインや器具の洗浄剤としても利用され、衛生面の確保に一役買っているのです。

汚れは油分を含むことが多いため、油と親和性のある乳化剤が汚れを浮かせて落としやすくする効果が。

食品添加物の乳化剤の種類と含まれる主な食品

乳化剤は、原料や作り方によっていくつかの種類に分かれます。
代表的なのが、グリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニンなど。

どれも食品衛生法に基づく安全審査を経ており、パンや菓子類、チョコレート、アイスクリームなど、わたしたちが日頃楽しむ食品に幅広く使用されています。
以下では、それぞれの特徴と主に使われる食品の例を見ていきましょう。

グリセリン脂肪酸エステル(グリセリンエステル)

油脂から得られる脂肪酸とグリセリンを組み合わせて作られたエステル。
安定性が高く、パンやお菓子、マーガリンなどさまざまな場面で使われています。表示には「乳化剤(グリセリン脂肪酸エステル)」などと記載されることも。

起泡剤や豆腐用消泡剤など幅広い用途で使用されています。

ショ糖脂肪酸エステル(ショ糖エステル)

砂糖のショ糖と油脂から得られる脂肪酸が結びついたもの。
甘味成分と相性がよく、ホイップクリームやチョコレート、清涼飲料水などでよく使われます。

「ショ糖脂肪酸エステル」として表示されることが多いです。
食品に使用される乳化剤の中でも、水にも油にも相性がよいため、食品への利用範囲が広いのが特徴。

レシチン(植物レシチン、卵黄レシチン)

レシチンは、大豆など植物由来のものと、卵黄から抽出されるものに大別。
マヨネーズやチョコレートなど、幅広い加工食品に使われ、コクを出す効果も期待できます。

「植物レシチン」表記の場合はベジタリアン対応とされるなど、用途に合わせた使い分けがされているんですよ。

大豆レシチンは大豆由来の成分ですが、レシチンの精製過程でアレルギー物質が除去されることが多いといわれています。

しかし、今まで大豆レシチンを添加していたチョコレートメーカーがアレルギー対策で他のレシチンに変更するなどの動きもあるため、アレルギーを持つ人は注意が必要です。

サポニン

サポニンは、大豆の種子やエンジュの花などの植物に含まれる成分で、泡立ちや乳化作用があることで知られています。
健康食品に含まれるイメージもありますが、加工食品では起泡などを目的に利用される場合も。

表示をチェックすると「サポニン」や「豆由来成分」として明記。
苦みや渋みがあるため、味の調整が必要です。

食品添加物の乳化剤が含まれる主な食品

乳化剤は以下のような、さまざまな食品に使われています。

ベーカリー類や菓子類、調味料系にも幅広く使用。
油分と水分をなじませる必要がある場面で重宝され、表示には「乳化剤」とまとめて記載されるケースが多いです。

普段の食事やおやつ選びのときにチェックしてみてください。

食品添加物の乳化剤に関するよくある質問

食品添加物の乳化剤は危険ですか?

国内で流通している乳化剤は、厳しい安全審査を通過したものだけなので、適正に使用される分には危険性は低いとされています。

ただし、極端に大量に摂取するケースは想定されていないため、日頃からバランスのよい食生活を心がけましょう。

食品添加物としての乳化剤の一覧は?

乳化剤と一口にいっても種類はさまざま。
代表的なのはグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、レシチン、サポニンなどがあります。

食品の原材料表示には、まとめて「乳化剤」と書かれていることもあれば、個別名が記載されている場合も。

食品の乳化剤とは何ですか?

食品の乳化剤とは、水と油のように本来交わらない成分を均一に混ぜ合わせる界面活性物質のこと。

パンや生クリーム、ドレッシングなど、なめらかな食感や安定性を保ちたい食品で広く使われています。
植物や卵黄由来の乳化剤もあるんですよ。

乳化剤は天然由来ですか?

乳化剤には、天然由来のものと合成のものがあります。
レシチンのように大豆や卵黄から抽出したものは「天然由来」といえますが、脂肪酸エステルなどは合成工程を経るケースも。

食品添加物の乳化剤がどんなものかを理解して安心できる食事を楽しもう

食品添加物の乳化剤について理解を深めると、過度に不安を抱かずにバランスよく選べるようになります。

日本では安全性の基準をクリアしたものしか使用されておらず、普段の食卓を支える重要な存在です。
ただし、過剰摂取をしてしまうと体への悪影響も考えられるため、食品表示を確認するなどして適切に選ぶようにしましょう。

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食品添加物のことを正しく知って、自分に合った方法で安心できる食生活を送りましょう。