あんしんの品質と栽培技術を未来へつなぐ。循環型農業で菊芋を栽培するやまどりOrganicRevoに行ってみた!

令和7年8月10日からの大雨により、熊本県内各所で甚大な被害が発生しました。
被害を受けられた熊本県の皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

みなさんは、菊芋という野菜を食べたことがありますか?

近年「スーパーフード」として注目されている、栄養価の高い野菜なんですよ。

今回取材したのは、熊本県山都町で有機菊芋を栽培する、やまどりOrganicRevo。
あんしんして食べられるものと、それを育てる技術を未来に残していくための取り組みをご紹介します!

見た目はしょうがのようにゴツゴツしており、味はじゃがいもとごぼうの間のようだと言われます。
熊本県では味噌漬けが主流ですが、和洋中どんな料理にも使えるんだとか。

じゃがいもやさつまいもなどと異なり、デンプンをほとんど含みません。
水溶性食物繊維の一種であるイヌリンを多く含み、腸内環境の改善に効果が期待できます。
まさに「スーパーフード」ですね!

原田さんの菊芋は、「有機なので皮ごと食べてもあんしん!」と組合員さんからも大好評です◎

やまどりOrganicRevoへ行ってみた!

「やまどりOrganicRevo」で働くメンバーは、原田さんを含め4名。
標高200m~800mの農地で農業に取り組む、少数精鋭のチームです。

スタッフは全員農業経験者なので、出勤時間や栽培の段取りなどもほとんど各自にお任せしているそうです。
全員が即戦力なので、細かな指示がなくても信頼して仕事を任せられる体制が整っているんですね。

原田さん

「やまどりOrganicRevo」代表。
2010年に農業をはじめ、山都町に移住しました。

もともとは建築関係の仕事をしていましたが、宮古島で有機栽培に取り組むある生産者との出会いをきっかけに農業の道に。

夏の菊芋畑はこんなに青々と生い茂っているそうです!

菊芋の栽培方法 管理は不要?

菊芋は、お盆を過ぎた頃に花を咲かせ、その後に芋が形成されます。
植え付けは3月頃、収穫は早くて10月中旬頃から行えるんだそう。
気温が下がるにつれ甘みが増していく、冬が旬の野菜です。

菊芋は生命力が強く成長スピードも速いため、芽が出て1か月半ほどで1mを超える草丈に。
あっという間に人が通るスペースもないほど成長するので、雑草が生える余地もないんだとか。

地温が上がりすぎないよう注意は必要ですが、マルチは張らず自然な状態で育てています。

収穫はすべて手作業!

栽培期間中の管理はほとんど必要ありませんが、収穫作業はとても大変。
機械で掘ると土中の菊芋に傷がついてしまうため、すべて手作業で行っています。

収穫後は、さつまいも用の高圧洗浄機を使用して洗浄し、菊芋のあいだに入った石や泥を取り除いています。
通常、土付きのまま売られていることの多い菊芋ですが、原田さんは「食べるときに困るかなと思って」とピカピカに洗浄。

その後腐りやすい根の部分を包丁で切り落とし、成長過程で実の部分がスポンジ状になってしまっていないかを確認します。
わたしたちの元に届く菊芋は、少しでも品質のよいものを提供したいという原田さんの思いが詰まっているんですね。

循環型農業って?

循環型農業とは、資源を循環させ、環境への負荷を軽減する農業のこと。
日本では、2022年7月に「みどりの食料システム法」を施行。
環境と調和のとれた、持続可能な食料システムの構築を目指しています。

その中身として、農業における化学農薬および化学肥料の使用量を低減すること、有機農業の取組面積の拡大などがあります。
有機農業の拡大そのものが、循環型社会へ移行していくためのカギと言えるでしょう。

わたしたち消費者にできることは、有機農業を知り、有機農産物を選択・購入すること。
アイチョイスでは、有機農産物の販売だけでなく、今回のような生産者さんへの取材や、有機農業を広げる取り組みにも積極的に参加しています。

原田さんの行う循環型農業

原田さんは、たくさんの栄養分を吸い上げて育った菊芋の茎葉を活用。
収穫後に茎葉を刈り取って粉砕し、土に混ぜて1年間寝かせておきます。

菊芋の農場は2haあり、毎年1haずつ交互に使うことで、畑を休ませながら土づくりを行うことが可能に。
休ませている畑は耕さず、草が生えたら自走式の草刈機を使い細かく砕くことを、1年間続けるんだそうです。

肥料もほとんど使わず、窒素分も土中と空気中のもので十分まかなえるとのこと。
収穫後に残る残渣(ざんさ)を堆肥として再利用することで、自然にやさしい循環型農業を実現しています。

「隠しごと」をしない理由

「僕にしかわからないことばかりでは続かない」と話す原田さんは、土づくりもとにかく簡単にしたいと言います。

土壌分析をコンサルタントに依頼しデータをとることで、適した栽培時期や品質の関係を可視化できるように。
今後はさらにデータを蓄積し、近年の気候変動にも対応した栽培メソッドを構築していく予定です。

栽培メソッドがあれば、新しく農業を始めた人でも安定した品質と収量を得られるようになると考えているそうです。

「隠しごとはしないので」という言葉の裏には、山都町の農業全体を支えたいという気持ちが感じられますね。

学校給食にも有機の食材を

熊本県の学校給食には、「ふるさとくまさんデー」という取り組みがあります。
地元でとれた食材や地域に伝わる郷土料理を献立に取り入れ、子どもたちに紹介。
熊本県の自然や文化への関心を深め、郷土を愛する気持ちを育てることを目的としています。

学校給食部会の部会長も務める原田さん。
ふるさとくまさんデーの日には、有機の野菜を献立に取り入れるようにしています。

山都町は、50年以上前から有機農業に取り組んできた町。
令和3年11月より、小中学校の給食に使用するお米はすべて山都町産の有機米です。
生産者が直接学校に出向き、一緒に給食を食べ、農業の話をする機会も設けているんだとか。
未来を担う子どもたちへ有機の大切さを伝える取り組み、素敵です!

原田さんに聞いてみた!

どうして菊芋の栽培を?

もえぞー

なぜ菊芋を栽培しようと思ったんですか?

とても寒い山都町で、ハウスや施設がなくても冬場に収穫できるものはないかと考えていたんです。
いろいろ試した中で、最も手がかからず大きな失敗がなかったのが菊芋でした。

周りに栽培している農家さんがいなかったことも決め手に。
誰もやっていないことに挑戦したかった、という気持ちがあります。

原田さん

家庭菜園で菊芋を育てるコツ

もえぞー

菊芋を家庭菜園で栽培するコツはありますか?

止めた方がよいと思います(笑)
菊芋は生命力が強く、管理しきれずにあっという間に菊芋畑になってしまう可能性があるため、あまりおすすめはできません。
もし栽培するなら、ブロックやレンガで場所を仕切るか、肥料袋で独立させるとよいと思います。

原田さん

おすすめの菊芋レシピ

もえぞー

おすすめの菊芋レシピはありますか?

薄くスライスした菊芋とベーコンをバターで炒め、塩コショウで味を調えた「菊芋とベーコンのソテー」はおすすめです。

ピカピカに洗浄してお届けするので、ぜひ栄養豊富な皮ごと食べてみてください。

原田さん

組合員さんへのメッセージ

もえぞー

組合員さんへのメッセージをお願いします。

大自然の中で、農薬を使わずにのびのびと育った菊芋を、ぜひ味わっていただきたいと思います。
食べにくい野菜だと思われがちな菊芋ですが、どんな料理にも合いますよ。

原田さん

持続可能な農業で、あんしんを未来へ

地球温暖化、環境破壊、農業人口の減少・・・わたしたちを取り巻く問題は、日々深刻さを増しています。
原田さんが取り組む循環型農業は、今こそ広く取り入れられるべき農業のかたちだと言えるでしょう。

「肥料を入れて栽培する方法も、たぶんもう古いんです」と話す原田さん。
土と微生物の環境整備が適切に行われており、水をしっかり与えることができれば十分だと言います。

経験から得られる栽培スキルや技術は、本来であれば簡単には人に教えたくないもの。
原田さんは、「自分ができること」を「自分がいなくてもできること」に変えていこうとしています。

循環できるのは、かたちのあるものだけではありません。
同じように農業に従事する人へ受け渡すことで、守れるものがあります。
あんしんをつないでいく思いやりこそが、循環型農業の本質なのではないでしょうか。

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編集担当あんにん

2025年アイチョイス入協。30代、二児の母。
毎日3食+おやつを欠かさない食いしん坊です。
新商品を見つけたらとりあえず食べてみる派!
ナッツはなんでも好きですが、食塩不使用のものを選ぶようにしています◎