アニマルウェルフェア(動物福祉)とは?家畜の暮らしを守る取り組み

ヨーロッパを中心に取り組まれている「アニマルウェルフェア」。
家畜の心に寄り添い、快適でストレスの少ない飼育方法を目指す考え方です。

しかし残念ながら、世界に比べると日本ではあまり進んでいません。
アイチョイスではこの取り組みが家畜や消費者にも大切だと考え、積極的に推進しています。

アニマルウェルフェアとは

「アニマルウェルフェア(以下、AW)」とは、日本語で「動物福祉」や「家畜福祉」を指します。

家畜の心に寄り添い、ストレスの少ない快適な環境への配慮や本来持つ行動欲求が満たされる飼育方法を目指す考え方です。

近年ではヨーロッパを中心に各国でAWへの関心が寄せられ、動物への不適切な扱いや飼育条件の改善を求める声も挙がっています。

またAWはSDGsが掲げる目標と密接な関係にあり、目標を達成するための重要な取り組みの1つです。

基本理念「5つの自由」とは

AWの評価基準となるのが、1960年代にイギリス政府が提唱した「5つの自由」です。
「5つの自由」はのちにAWの基本理念となり、世界的な影響を与えました。

日本でも2009年から「5つの自由」を模範としたガイドラインを策定し、随時改訂が行われているものの、具体的な法整備は整っていないのが現状です。

「5つの自由」について、農林水産省では現場での実践例について具体的に示しており、まとめると下記の内容となります。

[1] 飢え、渇き、栄養不良からの自由:新鮮な水やエサの給与

[2] 恐怖及び苦悩からの自由:動物を驚かせないような丁寧な扱い

[3] 物理的、熱の不快さからの自由:動物の特性に合った温度・照明管理、適切な換気による、快適な環境

[4] 苦痛、傷害、疾病からの自由:キレイな環境を保ち、病気やケガから動物を守る

[5] 通常の行動様式を発現する自由:動物の習慣を理解し、行動欲求を満たせるような環境づくり

「薬剤耐性菌」 が及ぼす影響

1980年代以降、世界的に「薬剤耐性菌(AMR)」が増え始めました。
薬剤耐性菌とは、家畜と人間の身体に影響を及ぼす抗生物質の効かない菌です。
治療法も見つかっておらず、多くの命をうばう可能性があります。

薬剤耐性菌を発生させる原因の1つが、抗生物質の大量投与。
病気の治療を目的とした抗生物質の使用は、畜産業界でも動物を守るうえで大切です。

しかし病気予防を目的とし、日ごろから飼料に混ぜて与え続けるのは危険。
不必要なタイミングでの薬剤投与によって、一定の菌が抗生物質への薬剤耐性をつけます。

薬剤耐性菌が家畜の体内で増加し、その動物を食べた消費者の体内にも入り込んでしまうのです。

薬剤耐性菌の発生を防ぐために重要なのは、動物のストレスを減らし免疫力を高めること。
そのうえで、薬剤に頼りすぎない飼育方法に変えていく必要があるでしょう。

日本と世界の取り組みを比較

卵を産む鶏のことを「採卵鶏」と言います。
AWの取り組みにおいて世界で急速な変化を見せているのは、この採卵鶏の飼育方法です。

世界と日本の取り組みを比較しながら、採卵鶏の飼育環境にスポットを当てて見ていきましょう。

採卵鶏の飼育方法

採卵鶏の飼育方法は、大きくわけて3つです。
AWの観点から廃止を促されているのが「バタリーケージ」。

ケージを重ねて多くの鶏を飼育できるうえに、動ける範囲が狭いことから運動量が減り、エサの量も少なく済みます。
鶏の糞もケージの下に落ちる仕組みなので、衛生面にも配慮されているのです。

ただし「つつき行動」「砂遊び」「止まり木に止まって眠る」「巣のなかで卵を産む」といった、鶏の行動欲求を満たせるものがケージ内に備わっていません。
ストレスが溜まり、病気や鶏同士がつつき合いケガするなどのリスクを伴います。

生産性に優れている一方、死亡率が1番高い飼育方法であり、AWの考えに反しているとの声も。

これらの問題を解消するために生まれたのが「バタリーケージ」の改良版である「エンリッチドケージ」です。

しかしあくまで最低基準を満たした飼育方法なので、狭いケージ内での飼育には変わりなく、AWへの配慮が十分とは言いがたいでしょう。
そのため、世界では3つの飼育方法のなかでも「ケージフリー」を推奨しています。

世界はケージフリー化へ

世界の養鶏業では、AWの取り組みが拡がっています。
とくに目を引くのはケージフリー移行への動きです。

これ以外の国々でもケージフリー化が進められています。
AWの法律の導入や取り組みの進歩は、国によってばらつきがあるのが現状です。

日本の9割以上がバタリーケージ

世界動物保護協会(WAP)が発表したレポートで、「畜産動物(家畜)の保護」の項目が最低ランクのG 評価とされた日本。
世界に比べると、日本のケージフリーへの移行が進んでいません。

2023年2月時点、日本の養鶏場では「バタリーケージ」での飼育が98.89%と発表されました。

ケージフリー飼育の割合は、なんとわずか1.11%。
ケージフリー移行を躊躇する理由の1つが、生産性の低下です。

「5つの自由」に沿った飼育方法を行うと、飼育費や人件費の負担が大きくなります。
生産者の収益が懸念され、思うように切り替えられないのです。

一方で、日本でケージフリー宣言をした企業は、2022年11月時点で180社以上にのぼり、少しずつですが日本もケージフリーへ舵を切り始めています。

アニマルウェルフェアを推進する生産者紹介

アイチョイスの生産者はAWの概念が広まる前から、家畜にストレスの少ない飼育方法を実践していることがほとんど。

今回、AWに取り組む4つの生産者をご紹介します。

【牛】さかうえ 里山牛(さとやまぎゅう)

里山牛は臭みがなく、赤身の旨味を味わえるのがポイントです。
里山牛を育てる「さかうえ」では、循環型農業を実践しています。

【豚】七星食品 自然豚(しぜんとん)

「七星食品」の自然豚は、お肉そのものの味を贅沢に堪能できるのが特長。
豚糞は堆肥として活用し、地域循環に取り組んでいます。

【鶏】シガポートリー セフティチキン

「シガポートリー」のセフティチキンは、適度な脂がのったバランスの取れたお肉です。
1坪当たりの羽数は一般に比べて、約半分で飼育しています。

【卵】株式会社 地主共和商会 平飼いたまご

「株式会社地主共和商会」の平飼いたまごは、黄身の甘みとぷるぷるの食感が自慢の有精卵。
一般的な飼育方法とちがい、雄鶏と雌鶏を一緒に飼う自然に近い形で飼育しています。

私たちの選択が家畜の未来につながる

AWの概念は、日本で触れる機会が少なく、知らない方も多くいます。
私自身、アイチョイスに入協するまで、家畜がどのように育っているのかまったく知りませんでした。

AWの取り組みを知った今では、自分にできることはないだろうかと考え行動しています。

その行動とは、私たち消費者がAWに取り組む商品を「選ぶ」こと。
「選ぶ」という小さな一歩が、AWが当たり前の世界を作るきっかけにつながると思うのです。

家畜も感情の備わった人間と同じ動物。
日ごろ私たちが食べている卵やお肉は、そんな家畜からもらった感謝すべき命であることをけして忘れてはいけません。

AWに取り組み、家畜が居心地のよい環境で暮らせる未来をアイチョイスと一緒に作っていきませんか?

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編集担当あかにー

2023年にアイチョイス入協。沖縄出身の30代。
恋人・フェレット3匹・ハムスター2匹・犬1匹・猫1匹の大家族。
製菓学校卒業後はパティシエやバリスタとして7年勤めていました。
最近はアイチョイスの食材を使ったお菓子づくりにハマり中。
ナッツは、カフェラテと相性抜群のアーモンドが好き。