食品添加物のにがりは体に悪い?効果や塩化マグネシウムとの違い、危険性とは

にがりは塩化マグネシウムを主成分とする食品添加物で、豆腐の凝固剤として利用されるほか、健康食品として見かけることもあります。
しかし、摂取方法を誤った場合や、過度な量を長期間にわたって摂取すると、体調不良を招くことがあると指摘されているのです。

本記事では、にがりの定義や用途、さまざまな種類についてわかりやすく解説します。

にがりとは、豆乳を固めて豆腐を作る際に使われる、食品添加物の「豆腐用凝固剤」として知られています。

以下では、にがりの特徴や役割について詳しく説明します。

にがりの定義と主成分と効果

にがりは海水から塩を取り除いた残留物のこと。
一般的には海水から塩化ナトリウムや塩化カリウムなどを分離した粗製海水塩化マグネシウムが「にがり」と認識されることが多いです。
長年使用されてきた実績により認可されている既存添加物として食品にも利用されています。

既存添加物などの食品添加物の分類は以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。

マグネシウムは、体内における酵素反応の促進や、リンやカルシウムとともに骨を形成する機能を持つミネラルです。

ただし、必要以上に大量のマグネシウムを摂取すると、下痢や血圧低下などの副作用が出る可能性があります。
このため、摂取量には十分な注意が必要です。

にがり自体には独特の苦味があり、和食の深い味わいを引き立てる役割も持ちます。
適切な量を摂取すれば、身体に有用なミネラルを補給しながら、料理の風味を高められます。

にがりの主な用途

代表的な用途は豆腐を作る際の凝固剤としての利用です。
豆腐作りでの使用方法は後述します。

一方、塩味を強めるために、漬物や発酵食品などの調味料として使われることも。
実験により、にがり成分は野菜の脱水率や破断強度にも影響があることが確認できており、今後さまざまな食品に使用される可能性があります。

また、「にがり水」としての健康目的の飲用も存在しますが、単体での摂取における効果は製品により異なるため、信頼性の高い情報を確認しましょう。

粗製海水塩化マグネシウムと塩化マグネシウムの違い

以下の2つの成分の違いについて解説します。

粗製海水塩化マグネシウムは、海水から塩化カリウム及び塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムを分離して得られた、マグネシウム塩を主成分とするものを指します。
「にがり」と表示できるのは、粗製海水塩化マグネシウムのように海水由来でマグネシウムを0.1%以上含む場合のみです。

塩化マグネシウムはマグネシウムと塩素からなる塩の一種で、にがりの主成分にあたります。
ただし、豆腐を固める目的で塩化マグネシウムを使用した場合はにがりと表現することが可能です。

表記名・表記主成分・ミネラル含有
塩化マグネシウム主に塩化マグネシウム
粗製海水塩化マグネシウム海水から塩化カリウム及び塩化ナトリウム又は塩化ナトリウムを分離して得られた、マグネシウム塩を主成分とするもの。亜鉛やカルシウムを含む場合がある。

参考資料:既存添加物名簿,(参照2025-10-10)
参考資料:規約解説 | 食用塩公正取引協議会,(参照2025-10-10)

にがり・天然にがり・本にがりの違い

前提として現在の食品表示制度では、食品添加物に「天然」という言葉を使用することは認められていないので注意が必要です。

本にがりについても、明確な定義はありません。
商品名として、ただの塩化マグネシウムは「にがり」、海水由来のものを「本にがり」と表現することがあります。

にがりの食品添加物以外の用途

食品以外の分野でも、にがりはその性質を活かして多方面で利用されることがあります。

にがりは製造工程中で得られる塩化マグネシウムを含むため、工業的にもさまざまな用途が考えられています。
たとえば、にがりを利用して、石膏や肥料、ゴムなどの生産が行われているのです。

また、入浴剤やスキンケア製品など、美容関連の用途でもにがりは注目されています。
マグネシウムやその他のミネラルが肌によい影響を与えるとして、一部の美容液やバスソルトにも配合されるケースがあります。

参考資料:にがりの利用(1)|綾井政雄,(参照2025-10-10)

食品添加物のにがりは体に悪いの?

普通に摂取する分には問題ないとされる一方で、塩分やマグネシウム量が高いことから、過剰摂取すれば体調不良を引き起こす可能性があります。
実際にマグネシウムの過剰摂取によって体への悪影響が出たという報告もあるのです。

部分的な効果だけを期待して大量に摂取すると、かえって健康を損ねるリスクがあります。
体質や健康状態によってはマグネシウムの摂取を制限する必要があるため、医師と相談しながら利用を検討することが大切です。

にがりの安全性

厚生労働省は、食品添加物としてのにがり(塩化マグネシウム)の使用に対して厳格な基準を設けています。
これらの基準を満たしている製品であれば、通常の摂取量の範囲では危険性は極めて少ないと考えられています。

ただし、マグネシウムを大量に取りすぎると、腎臓への負担や血圧に影響が出る可能性が示唆されています。
とくに腎機能に問題がある方は注意が必要です。

にがり(塩化マグネシウム)の摂取基準

日本人の食事摂取基準では、成人が必要とするマグネシウムの目安量が以下のように定められています。

年齢男性女性
18~29歳340mg280mg
30~49歳380mg290mg
50~64歳370mg290mg
65~74歳350mg280mg
75歳以上330mg270mg

一般に、通常の食生活を送っていれば不足しにくいミネラルである一方、にがりなどを利用して追加摂取する場合は、摂取量の偏りがないか確認することが推奨されます。

とくに妊娠中や授乳中の方、子どもの場合は、マグネシウムのサプリメントやにがり製品を利用する前に、医師や栄養士に相談すると良いでしょう。

適切な摂取量を超えれば体調不良の原因になる可能性があるため、個々のライフステージに合わせた判断が必要です。

にがりを取りすぎた時の症状とは

にがりを過剰に摂取すると、下痢や腹痛といった消化器系の不調が起きやすくなります。
 これは、マグネシウムに腸のぜん動運動を活発にする性質があるためで、過剰に摂取すると便がゆるくなりやすくなるためです。

マグネシウムの過剰摂取がさらに進むと、倦怠感や吐き気、場合によっては心拍への影響をおよぼすことも指摘されています。
ただ、通常の食事や一般的な豆腐の摂取程度では、そこまで高濃度のマグネシウムを摂取するケースは多くありません。

にがりの食品表示

にがりを豆腐を作るために使用した場合は、「塩化マグネシウム」という物質名か、「凝固剤」や「豆腐用凝固剤」と記載します。

豆腐用凝固剤はにがりの他にもありますが、にがりとして表記できるのは「塩化マグネシウム」と「粗製海水塩化マグネシウム」のみです。
にがりであることを分かりやすく表記したい場合、「塩化マグネシウム(にがり)」や「粗製海水塩化マグネシウム(にがり)」のように括弧付きで表示することもあります。

マグネシウム含有量が0.1%以上の場合は「にがりを含む」表記を一括表示、製法表示の枠外に記載することができるので、選ぶ際の参考にすると良いでしょう。
健康食品やサプリメントとして販売されるにがり製品は、食品添加物表示とは別の形で成分表記がされる場合があります。

いずれにしても、総塩分量やマグネシウム含有量などのチェックは欠かさずに行うことが大切ですよ。

その他食品添加物の表示方法については以下の記事で詳しく解説しています。

参考資料:規約解説 | 食用塩公正取引協議会,(参照2025-10-10)

食品添加物のにがりの精製方法

にがりは海水や塩湖の水などを利用し、さまざまな工程を経て精製されます。
伝統的な手法では、海水を天日干しして結晶化した食塩を取り出し、その際に得られる残滓をにがりとして利用します。

現代では、工業的に海水を大量に煮詰めて定められた成分濃度まで濃縮し、塩化ナトリウムを除去する方法が主に用いられます。

精製の過程では、不純物を取り除きながら塩化マグネシウムの含有量を高めていきます。
この工程の違いにより、最終的な製品の純度やミネラルバランスにばらつきが生じる場合があります。

こうした違いは豆腐の仕上がりや味のほか、溶解性や風味付けなどにも影響を与えます。
そのため、商品を選ぶ際は採用されている製法や成分比率を考慮すると、より狙いに合ったにがりが得られるでしょう。

参考資料:塩の作り方とにがりの品質,(参照2025-10-10)

にがりは豆腐作りでどのように使用される?

豆腐用凝固剤としてのにがりは、豆腐の味わいや食感を左右する非常に重要な存在です。
加えるタイミングや分量が豆腐の舌触りや硬さに大きく影響するため、豆腐屋や料理家は長年の経験に基づいて微調整を行っています。

にがりは、水に溶けやすく、豆乳の凝固反応が速いですが、大豆の甘みを引き出すのが特徴です。
他の豆腐用凝固剤にも、水に溶けにくいもの、凝固力が反応が遅いものなどそれぞれ特徴があります。

豆腐づくりにおけるにがりの使用方法

通常、温めた豆乳に対して、適量のにがりを少しずつ加えながら静かにかき混ぜ、凝固を促進します。
豆乳の温度が適切であることが、きれいに固まるための大きなポイントです。

豆乳全体をまんべんなく凝固させるには、にがりが均一に行き渡るようにする工夫が必要です。
温度や時間を調整、ごく短い時間でさっと混ぜて放置するかなど、豆腐職人の技術が問われる部分でもあります。

手づくりで行う場合も、失敗を重ねながら凝固タイミングを体感的に把握していくと、おいしい豆腐がつくりやすくなるでしょう。

参考資料:豆腐の製法|豆腐のことなら全豆連,(参照2025-10-10)

にがり以外の凝固剤

その他の代表的な豆腐の凝固剤は、塩化カルシウムや硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトンです。

塩化カルシウムは、凝固力が強く、油揚げや凍り豆腐用の豆腐に使用されます。

硫酸カルシウムは「澄まし粉」とも呼ばれ、弾力があり切りやすい豆腐になることが特徴です。

グルコノデルタラクトンは酸の力でタンパク質を凝固させるため、保水性に富み機械による製造に向いています。

どの凝固剤も、それぞれ特有の風味や固まり方があるため、市販の豆腐では凝固剤の組み合わせがラベルに記載されている場合もあります。
豆腐の味や食感の違いを楽しみたい方は、表示を見ながら選んでみるとおもしろいですよ。

その他豆腐に使用される食品添加物例

豆腐づくりの工程では消泡剤(大豆の泡立ちを抑えるため)など、にがり以外にも食品添加物が用いられることがあります。
豆乳の煮沸中に発生する泡を抑え、豆腐の表面が滑らかに整うように工夫しているのです。

また、商品によっては品質を均一に保つための調整剤が加えられている場合もあります。
これら添加物は厚生労働省の基準を満たしたものが使用されるため、通常量の摂取では問題ありません。

食品添加物のにがりについてのよくある質問

にがりを使用する上で、多くの人が疑問に思う点をQ&A形式でまとめます。

豆腐のにがりは添加物ですか?

一般的に、豆腐を固める目的で使用されるにがりは、食品添加物に該当します。
厚生労働省の定める食品添加物リストに掲載されており、表示義務が生じます。

商品のパッケージに「塩化マグネシウム(にがり)」などと書かれていれば、それは添加物として適正な表示に当たるため、とくに問題ありません。

にがりは体にいいんですか?

にがりに含まれるマグネシウムなどのミネラルは、体内で重要な働きをしているため、適切な範囲で摂取することは健康に役立つ側面があります。

とくに便通改善や筋肉機能の維持、酵素のはたらきをサポートする効果などがよく知られている点です。

しかし、マグネシウムは他のミネラルや栄養素とのバランスが大切です。
一つの成分だけを過剰にとると、体全体のミネラルバランスが崩れ、健康を損ねるリスクがあります。

したがって、にがりを摂取すること自体が健康に直結するわけではなく、総合的な食生活の中で足りない分を補う選択肢のひとつとして考えるのが理想といえます。

にがりにはどんな危険性があるのですか?

最も一般的なリスクは、マグネシウムをはじめとするミネラルの過剰摂取です。

下痢や腹痛、倦怠感などの症状を引き起こす恐れがあり、とくに高齢者や腎機能に配慮が必要な方は注意が必要とされています。

塩分も含まれるため、高血圧の方や塩分制限中の方は、にがりドリンクなどを習慣的に摂取する際に注意しなければなりません。

にがりは食品添加物として表示できますか?

にがりは食品添加物ですので、食品表示に記載が必要です。

ただし、「にがり」のみの表記はできません。
表示の際には「塩化マグネシウム(にがり)」などのように物質名と並列して表記する必要があります。

にがりは使用禁止されていますか?

にがりが全面的に使用禁止されるという規定はありません。
海水から塩を製造する過程で得られるにがりは、法令上で食品添加物として認められています。

食品添加物のにがりで美味しい豆腐ができている

食品添加物のにがりは、主に以下の成分を指します。

にがりは、豆腐づくりに欠かせない凝固剤として知られていますが、健康食品としても注目されています。
主成分はマグネシウムで、適量であれば体に良い働きをしますが、過剰摂取は健康被害につながる可能性もあるため、正しく理解して摂取しましょう。

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