食品添加物のトレハロースとは|使い方や効果、メリットとデメリットを解説
砂糖の代わりに使われることが多い食品添加物のトレハロース。
実は、自然界に多く存在する物質であることをご存知でしょうか?
本記事では、トレハロースの原材料やメリット・デメリット、使い方や効果まで幅広くご紹介します。
目次
食品添加物のトレハロースとは
トレハロースは自然界にも存在

トレハロースは、以下のような生物にも含まれている物質です。
- 微生物:細菌・酵母
- 動植物:きのこ・海藻・エビ・昆虫
ここから、トレハロースについて詳しく解説します。
また、食品添加物の基本について知りたい方は、以下の記事をご覧ください。
参考:トレハロースの生産技術の開発とその用途開発 ,(参照2025-11-21)
参考:トレハロースの特性と生理作用,(参照2025-11-21)
トレハロースの原材料

主に、じゃがいもやとうもろこし、タピオカ由来のでんぷんを原材料として製造されています。
従来は酵母から抽出・精製されていましたが、コストが高いことがネックでした。
そこで、安価なでんぷんから2種類の酵素を作用させてトレハロースを大量生産する製法が開発され、利用が広がっています。
参考:トレハロースの生産技術の開発とその用途開発 ,(参照2025-11-21)
参考:トレハロースの特性と生理作用,(参照2025-11-21)
トレハロースと砂糖は違う?

トレハロースと砂糖は異なる糖質です。
違いを以下の表にまとめました。
| トレハロース | 砂糖 | |
| 熱・酸への強さ | 酸や熱分解に強い 加熱工程での分解や着色がほとんどない | タンパク質やアミノ酸と加熱するとメイラード反応が起こる |
| 甘味度 | 砂糖の約45%程度 | 基準(100%) |
| でんぷん老化抑制効果 | 特に高い | 一定の老化防止効果を持つ |
| 自然界での存在 | きのこ類、パン酵母などに多く含まれ、微生物、昆虫、動植物等に広く存在する | 一般的なサトウキビやテンサイなどの植物 |
| 製造方法 | でんぷんを微生物由来の酵素で加水分解して製造 | サトウキビやテンサイから抽出・精製 |
参考:トレハロースの生産技術の開発とその用途開発 ,(参照2025-11-21)
参考:トレハロースの特性と生理作用,(参照2025-11-21)
参考:甘味料としての糖類,(参照2025-11-21)
トレハロースのカロリーは?

トレハロースのカロリーは砂糖と同じ約4kcal/gです。
摂取すると血糖値も上昇します。
参考:甘味料としての糖類,(参照2025-11-21)
海外での使われ方

食品添加物であるトレハロースは、海外の多くの地域でその利用が認められています。
欧州(EU)ではトレハロースをNovel Foodsとして認可投入しました。
米国食品医薬品局(FDA)は、トレハロースを一般的に安全とみなされる(GRAS)食品成分であるとしています。
トレハロースは、冷凍デザートや乳製品、肉・魚製品などで、水分保持や食感の安定化に利用されています。
また、その活用は食品分野にとどまりません。
農業や畜産、園芸などの分野でも活用が検討されています。
上記のように、トレハロースは日本含む各国で積極的に活用が進んでいるのです。
海外の食品添加物事情については以下の記事で詳しく解説しています。
参考:トレハロースの生産技術の開発とその用途開発 ,(参照2025-11-21)
トレハロースの効果と目的

以下の項目でトレハロースの主な効果と目的を解説します。
- でんぷんの老化を抑える
- 水分を保持してしっとりさせる
- タンパク質の変性を抑制する
- 風味と色合いの劣化を抑える
- ガラス化して品質維持する
でんぷんの老化を抑える

でんぷんを含む食品は低温保存や時間の経過とともに老化が進み、硬化したりパサついたりして品質が劣化します。
トレハロースはでんぷんの老化に対して強い抑制作用を持ち、菓子類や麺類などでんぷんを含む食品の日持ち向上が認められています。
参考:トレハロースの生産技術の開発とその用途開発 ,(参照2025-11-21)
水分を保持させしっとりさせる

トレハロースは水分子との相互作用が強く、高い保水性を持っています。
食品の水分を安定的に保ち、離水や乾燥を防ぐことで、保存性が向上。
また、凍結・解凍時の水分の分離を防止することも可能です。
参考:トレハロースの特性と生理作用,(参照2025-11-21)
タンパク質の変性を抑制する

タンパク質は加熱や凍結によって変性し、固まる性質を持っています。
しかしトレハロースは、タンパク質の変性を抑制する効果があるのです。
トレハロースを使用すれば、卵の加熱時の凝固や、鶏肉・ひき肉などの肉類の硬化を防ぎ、ふっくらとした食感を保つことが可能です。
このタンパク質の変性を抑える効果は、スクロースやマルトースなどの他の糖類よりも強いとされています。
参考:トレハロースの生産技術の開発とその用途開発 ,(参照2025-11-21)
風味と色合いの劣化を抑える

トレハロースは熱や酸に対して強いため、メイラード反応による着色などが起こりにくい食品添加物です。
また、矯味・矯臭効果という食品の不快な味や臭いを消す効果があります。
これにより、トレハロースは食品の風味と色合いの劣化を防ぐことにつながるのです。
参考:トレハロース添加による低たんぱく米およびでんぷん米の食味への影響,(参照2025-11-21)
ガラス化して品質維持する

トレハロースは煮詰めると、他の糖類よりも高い温度でガラス化して硬まっていきます。
スクロースが約62℃に対して、トレハロースは約114℃です。
そのため、食品の品質維持において重要な役割を果たします。
たとえば、以下です。
- 食品中の水分が安定的に保たれる
- サクサク感を長く維持できる
- 湿気による品質劣化を抑える
参考:澱粉含有食品における物理的性状変化,(参照2025-11-21)
食品添加物のトレハロースの使い方

食品添加物のトレハロースの使われ方を、主に以下に焦点を当てて解説します。
- 食品添加物としての使われ方
- 家庭での活用例
- 使用時の注意点
食品添加物としての使われ方

トレハロースは、熱や酸に強いため、食品の品質劣化防止や、食感や風味の改善に利用されます。
特に以下の使われ方により、食品の品質維持に貢献しています。
- でんぷんの老化抑制(米飯、パン、和菓子など)
- タンパク質の変性抑制(卵、肉加工品)
- 保水性(ゼリー、ムース)
- 冷凍時の組織保護
- 矯味・矯臭作用
家庭での活用例

トレハロースはご家庭でも活用できます。
たとえば、以下のような活用例です。
- 炊飯時に加えてご飯が硬くなるのを防ぐ
- パンや焼き菓子のしっとり感を長く保つ
- 肉料理のパサつきを抑えて、しっとりとした食感に仕上げる
また、甘味度が砂糖と比較して約45%程度のため、砂糖の置き換えとしても優秀です。
参考:甘味料としての糖類,(参照2025-11-21)
使用時の注意点

甘味度が砂糖の約45%と控えめで、砂糖の代用として使いやすいトレハロースですが、摂りすぎには注意が必要です。
カロリーは砂糖と同じ4kcal/gであり、血糖値も上昇します。
日常生活の中で、コントロールしながら使いましょう。
参考:甘味料としての糖類,(参照2025-11-21)
食品添加物のトレハロースのメリットとデメリット
食品添加物のトレハロースのメリットとデメリットを以下で解説します。
トレハロースのメリットは?

トレハロースの主なメリットは、高い品質保持機能と健康面への貢献です。
トレハロースは、矯臭・矯味効果や、でんぷん・タンパク質の老化抑制など、さまざまな品質保持機能も持っています。
トレハロースのデメリットは?

トレハロースのデメリットは、現時点では確認されていません。
一部では腸炎との関わりを指摘する声もありますが、現時点でその因果関係は確認されていません。
食品添加物のトレハロースの安全性は?

トレハロースは、食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同食品添加物専門家会議(JECFA)が1日摂取許容量(ADI)を特定しないほど安全性が高く、米国ではGRAS物質として承認されています。
ただし、腸炎や発がん性に関して不安を抱く方もいらっしゃるため、以下で詳しく解説します。
参考:公益財団法人 日本食品化学研究振興財団,(参照2025-11-21)
トレハロースで腸炎を起こす?

2018年、英学術誌Natureにてトレハロースが腸炎を引き起こすという論文が発表されました。
この論文がきっかけで、トレハロースは危険なのではないかというイメージが一部で広まったのです。
ただし、この内容についてはその後反論する論文も出され、現在「トレハロースが腸炎を引き起こす」という事実は確認できていません。
参考:食事性トレハロースは流行性クロストリジウム・ディフィシルの病原性を高める,(参照2025-11-21)
トレハロースの発がん性について

発がん性のリスクは確認されていません。
むしろ、さまざまな疾患や発がん原因と大きくかかわるスーパーオキシドジスムターゼという抗酸化物質の活性を、トレハロースが安定化させる作用について報告されています。
つまり、トレハロースを活用することで、野菜等に含まれる抗酸化物質をうまく残存させることができるのです。
参考:トレハロースの特性と生理作用,(参照2025-11-21)
トレハロースが含まれる食品例
トレハロースが含まれる食品例として、加工食品での利用例などをもとに詳しく解説します。
加工食品での利用例

加工食品でのトレハロースの主な使用例は以下です。
| でんぷん老化防止に必要な食品例 | 米飯、麺、パン、焼き菓子、和菓子 |
| タンパク質の変性防止に必要な食品例 | 卵加工品、乳加工品、肉加工品 |
| 保水性が必要な食品例 | ゼリー、ホイップクリーム、スポンジケーキ |
| 冷凍時の組織保護が必要な食品例 | 冷凍食品、アイスクリーム、氷菓、豆腐 |
| 矯味・矯臭作用、風味改善が必要な食品例 | 豆乳、青汁、アミノ酸飲料、調味料 |
| 結晶化・ガラス化が必要な食品例 | キャンディ、スナック菓子、クッキー、 ビスケット、パイ生地、ソフトキャンデー |
このように、幅広い食品でトレハロースの機能は活用されています。
トレハロースが含まれていたら無添加食品ではない?

トレハロースは食品添加物として扱われるため「無添加食品」と表示するのは適切ではありません。
食品添加物には表示に関するガイドラインやルールが明確に定められているため、それに則った記載をしなければなりません。
トレハロースの場合、甘味料で使用する場合は食品添加物の物質名と用途名を一緒に表示した「甘味料(トレハロース)」とする必要があります。
食品添加物の表示については、以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
食品添加物のトレハロースのよくある質問

食品添加物のトレハロースについてよくある質問に以下で回答します。
トレハロースは安全な食品添加物ですか?

トレハロースの原材料は何ですか?
生産されるトレハロースの原材料は、主にじゃがいもやトウモロコシなどのでんぷんです。
これらのでんぷんを微生物由来の酵素で加水分解し、トレハロースを製造しています。

食品添加物トレハロースの使用目的は?
食品添加物としてのトレハロースの主な使用目的は、食品の品質維持と食感向上です。
具体的には、でんぷんの老化抑制(米飯、パンなど)、タンパク質の変性抑制(卵、肉加工品など)、保水性の向上(ゼリー、ムースなど)、冷凍時の組織保護 、そして矯味・矯臭作用による風味改善など が挙げられます。

トレハロースを使うメリットは?
トレハロースは、甘味度が砂糖の約45%と控えめで、熱や酸に非常に安定しているため、加熱・加工しても分解や着色(メイラード反応)がほとんどありません。
また、他の食品成分の変性にも影響が少ないため、食品本来の風味や色合いを損なわずに品質や食感を向上させ、日持ちを長くできる点もメリットです。

トレハロースが含まれる食品にはどんな効果があるのですか?
トレハロースには品質保持と食感向上の効果があります。
たとえば、米飯やパン、和菓子ではでんぷんの老化を抑制し、柔らかさを保ちます。
卵加工品や肉加工品では加熱によるタンパク質の硬化を防ぎ、ふっくらとした食感の実現が可能です。
このように、トレハロースが使用されている食品にはさまざまな効果が期待できます。

食品添加物のトレハロースは安全性の高い砂糖の代用品!

トレハロースは、きのこ類など自然界に広く存在し、国際機関(JECFA)や各国で安全性が確認されている食品添加物です。
主にじゃがいもやとうもろこしなどのでんぷんを微生物由来の酵素で製造し、砂糖の約45%という控えめな甘味と、熱や酸に強いという特長を持ちます。
食品のでんぷんの老化やタンパク質の変性を抑え、保水性の向上や冷凍時の組織保護、風味の改善など、多様な機能により品質と食感を高めます。
カロリーは砂糖と同等でブドウ糖に分解・吸収されるため、機能性素材として幅広く活用されています。
安全性が高いとはいえ、食品添加物を避けたい方は、有機食品などを選ぶのはいかがでしょうか。
アイチョイスは、食品添加物に頼らずオーガニックな食材・食品を取り扱う生協です。
さらに安心安全な食卓にしていきたいという方は、ぜひ一度アイチョイスの「おためしボックス」を試してみてくださいね。







FAO/WHO合同食品添加物専門家会議(JECFA)により安全性が評価され、1日摂取許容量(ADI)も設定されていないため、安全性が高いと言えます。