投稿日2025.8.22
有機野菜ならではの味とは?|慣行野菜との違いを比較・解説
目次
有機野菜の味の違いは?本当においしいの?徹底解説

健康志向や環境配慮の観点から注目されている有機野菜。
一般的な慣行栽培の野菜とは、定義や特徴に明確な違いがあります。
有機野菜・オーガニック野菜・無農薬野菜について解説します。
有機野菜・オーガニック野菜とは

有機野菜やオーガニック野菜は、安全性や栽培の基準が厳格に定められています。
有機野菜は農林水産省が定めた「有機JAS規格」の条件を満たす必要があり、認定されると「有機JASマーク」を貼れるのです。
生産者にはどの畑でどのような資材をいつどのくらい使用したのか等の生産履歴や、格付けした(有機JASマークを貼って出荷した)数量など、生産工程管理記録の作成と保存が義務付けられています。
定期調査が年に1回以上あり、更新することが負担に感じる方も少なくないといえるでしょう。
オーガニック野菜は有機野菜と同じ意味で、栽培には有機質肥料と厳選された農薬の使用が求められています。
参照:【有機農業関連情報】トップ ~有機農業とは~:農林水産省,(参照2025-08-22)
無農薬野菜とは

無農薬野菜は、栽培期間中に農薬を使わずに育てた野菜です。
無農薬野菜は、多くの人が「まったく農薬が使われていない」と思いがちですが、実際にはそうとは限りません。
土壌や水路に残留する農薬の影響を完全に排除できないため、消費者に誤解を与える可能性も。
農林水産省は2007年に「無農薬」という表現を禁止し、「栽培期間中農薬不使用」という表現を推奨しています。
「栽培期間中農薬不使用」と表示することに生産履歴等の義務付けはなく、自己管理のみであることが、無農薬野菜と有機野菜との大きな違いといえるでしょう。
※アイチョイスの商品には農薬不使用という文言で表記を統一しています。
参照:特別栽培農産物に係る表示ガイドライン:農林水産省,(参照2025-08-22)
有機野菜のメリットとデメリット

「体によさそう」「環境に配慮されている」などの印象が強い有機野菜ですが、メリットとデメリットの両面があります。
それぞれを具体的にまとめました。
メリット

有機野菜は化学農薬や化学的に合成された肥料を使用しておらず、自然環境や人体へのリスクを最小限に抑える魅力があります。
主なメリットは以下の4点です。
- 健康面における農薬リスクの低減
- 栄養価の高さ
- 環境にやさしい栽培方法
- 優れた味と品質
有機野菜の栽培方法は、化学物質の体内への取り込まれるリスクを低減させます。
同時に、土壌や水質の汚染が少なくなることで生き物にやさしい環境をつくり、生物多様性の保全と持続可能な農業の促進にも。
また有機栽培は、作物本来の成長する力を発揮しやすい環境をつくるので、旨味が向上しやすくなります。
とくにアミノ酸系の有機質肥料を使用した野菜は、硝酸イオンの量が抑えられ苦みやえぐみの少ないおいしい野菜が育つのです。
※硝酸イオン・・・野菜の成長に不可欠な窒素成分だが、過度に吸収すると苦みやえぐみの原因に。
デメリット

有機野菜のデメリットは主に以下の6点が挙げられます。
- 高価格
- 安定供給の難しさ
- 不揃いな見た目
- 病害虫対策の課題
- 収穫量の問題
- 認証コストの負担
有機栽培は育成が不安定で、色や形が不揃いになることが否めません。
その結果、病害虫の被害や見た目の不均一さが原因で、品質基準に合わない野菜は一般流通に出せないことが多くあります。
また、有機JAS規格に従うと限られた農薬しか使用できず、害虫を防ぐのが困難な場合も。
日本の高温多湿の気候では、農薬を使用しない有機栽培は効率的ではなく、供給が不安定になりがちです。
そのため、病害虫や雑草対策にかかる手間や時間が増え、価格上昇の原因になります。
さらに、有機JASの認証取得には高額な審査費用が必要なため、取得を諦める農家さんも。
有機野菜の栽培には多くのハードルが存在します。
味の違いについての論文を調査

慣行栽培の野菜とはどのような味の違いがあるのか。
有機野菜がもつ栄養や味の特性から、以下の3点にまとめました。
ビタミンCや糖度が高くなる

有機野菜に含まれるビタミンCや糖度の含有量ついて述べた論文があります。
慣行栽培のものと比較すると、有機野菜の方がビタミンCや糖の含有量が高いとのこと。
具体的には、さつまいものビタミンC含有量は慣行栽培よりも、有機栽培かつ天然石膏を施用した場合に高い結果に。
また、ビタミンCは光合成産物を基質として生成され、その生成には光合成と栽培条件が関連することが示されました。
だいこんのビタミンC含有量は、有機栽培が最も高い数値に。
窒素肥料による利益と糖度の関係性があり、糖含有量向上には有機質肥料が効果的です。
有機栽培で糖含有量が増えるのは、土壌の保水性や透水性によるものと考えられています。
参照:有機栽培野菜と普通栽培野菜のビタミンCおよび糖質含量について|鯨幸夫(参照2024-08-02)
抗酸化物質が多く含まれている

有機野菜は、ストレス条件下で栽培されることにより、抗酸化物質が増えるメカニズムがあります。
有機栽培は窒素施用量が少なくストレスが強いため、抗酸化物質の生成が活発化するのです。
ストレス条件下で植物は抗酸化物質やエネルギーを生産し、自己防御の仕組みを活性化させ、植物ホルモンの生成を促進します。
参考文献:「検証 有機農業」西尾道徳著 農山漁村文化協会,(参照2025-08-22)
硝酸体窒素が少ない=えぐみが少ない!

有機栽培と慣行栽培の栽培条件の違いによる、野菜の栄養成分を調査した実験があります。
栽培方法によって、葉物野菜の栄養成分や官能特性に違いが見られました。
中でも、えぐみのもととなる硝酸体窒素などの成分を分析した結果、有機栽培の野菜においてはその数値が低くなることが示されています。
たい肥を使用することによって、硝酸が少なくビタミンCが多い野菜を作り出せる可能性が。
また、牛糞たい肥を利用することで葉菜のビタミンCが増加し、えぐみの原因である硝酸が低くなることが推察されています。
参考:栽培条件(有機栽培と慣行栽培)の違いによる葉物野菜の栄養成分と官能特性|日笠志津(参照2025-08-22)
有機野菜の魅力を農家さんに聞いてみた!

有機野菜にはどのような魅力があるのか。
実際に有機栽培をしている農家の方に話をうかがいました。
自然の仕組みを利用した農法

えぐみを極力減らした栽培で食べやすく
2022年から有機小松菜を栽培し、畑の広さはテニスコート55面分に相当します。
11棟のハウス(25a)と野外の畑(120a)を組み合わせ、年間を通じて出荷できる体制を整備。
有機栽培本来の姿である循環型農業を心掛け、えぐみの少ないおいしい小松菜を栽培しています。
できないときに無理をするのではなく、できるときにどのようにしっかりとよいものをつくるかをモットーに、持続可能な農業を実践中です!

たっぷりの愛情がおいしさに
愛媛県で「有機栽培ブラッドオレンジ」の栽培に長年携わっています。
真っ赤な果肉が特徴のブラッドオレンジは、糖度は13℃以上で濃厚な甘さ。
高級オレンジとして組合員の皆様にご好評いただいていることが励みです。
これからも、農薬を使用せずにおいしいブラッドオレンジの栽培に取り組んでいきます!

地域の未利用資源を有効活用
40歳で農業に参入し、麦や大豆などの穀物を栽培しています。
国産穀物の重要性を考え、2014年から有機栽培を本格的に始めました。
地域の未利用資源である「もみ殻」を炭化して国産有機質肥料を作り出し循環型社会の実現を図っています。
鶏糞は隣町から毎日運び入れ、さらにキノコの廃菌床も資源として活用。
地域資源を利用することで低コスト化も実現し、現在は広大な作付面積を3人で管理しています。
年齢に負けず、これからも有機農業の拡大に向けた挑戦を続けていきます!

有機野菜と一般的な野菜を食べ比べ!

編集部内のスタッフ20名(20~60代の男女)に有機野菜と一般的な野菜を食べ比べてもらいました。
サンプルの野菜は、下の写真からもわかるように有機野菜と一般野菜では見た目にも違いがあることがわかります。
有機野菜のにんじんは根までしっかりとした太さがあり、ピーマンは濃い緑色です。
ミニトマトやパセリも有機野菜の方が発色がよく、小松菜はしなやかに伸びているのがわかります。
調理方法


各野菜の調理方法については下記の通りです。
有機野菜はやはりおいしい
- ピーマン:繊維を断ち切って細切り
- パセリ:みじん切り
- にんじん:5~10mmの輪切りにし、20~30分間蒸す
- ミニトマト:すべて半分に切る
- 小松菜:葉の部分を手でちぎって食べる

試食を経て、上グラフのような結果が出ました。
まず、ピーマンと小松菜は一般野菜の方が強い苦みやえぐみを感じられ、有機野菜は食べやすい傾向に。
ミニトマトの試食結果から有機野菜の方が顕著に甘さが現れた一方、にんじんではおおよそ同程度の回答結果となりました。
これは、蒸すという調理方法がにんじんの甘みを引き出す要因となり、有機野菜と一般野菜において差がほとんど表れなかったのではと考えられます。
最後に香りに関して、パセリは有機野菜の方が強く感じられることがわかりました。
これらのことから有機野菜は香りが高く、えぐみが少ないうえに際立つ甘みのおかげで、野菜本来のおいしさを味わえる傾向があるといえます。
有機野菜の味に関するよくある質問

有機野菜の味が濃いと感じるのはなぜですか?
有機野菜は化学的肥料や農薬不使用のため、えぐみが抑えられ野菜そのもののおいしさを味わえます。
有機質肥料は微生物によって分解され、それを植物が吸収するため成長が緩やかになり、その結果、野菜本来の濃い味が生まれやすくなるのです。

有機野菜のよさは?
基本的に農薬を使わずに栽培されているため、化学物質が人体に与える影響が低減されます。
地球環境にも配慮された栽培方法で、栄養価が高く、味の濃い野菜に育ちやすい点が魅力です。

有機野菜とオーガニック野菜の違いは?
オーガニック野菜は有機野菜の英訳であり、違いはありません。
いずれも、有機質肥料や一部使用可能な農薬で栽培され、有機JAS認証を受けた野菜のことです。

有機野菜の特性を知っておいしく活用

有機野菜は健康面や環境面においてメリットがあり、味も一般的な野菜より優れているとされています。
しかし、慣行栽培に比べると価格や出荷量の不安定さなどのデメリットも存在。
有機野菜を栽培する農家のみなさんは、自然の仕組みをいかした持続可能な農法を実践しています。
愛情をかけた栽培がおいしさにつながっているのです。
有機野菜をうまく生活にとり入れることで、身体を大切にしながら野菜のおいしさを味わえます。
まだ有機野菜を食べたことがない方は、一度食卓にとり入れてみてはいかがでしょうか。
当メディアの運営元である「アイチョイス」では、愛知・岐阜・静岡・三重(一部地域)を中心に、安全・安心な有機野菜を宅配サービスで提供しています。
地元産の野菜を多く取り扱っており、地産地消にも取り組んでいるのが魅力です。
アイチョイス未加入の方限定「おためしボックス」の中にも自慢の有機野菜が入っているので、ぜひ試してみてくださいね。
農業歴50年で、「くまもと有機の会」の一員として活動しています。
当初は慣行栽培を行っていましたが、除草剤の影響を感じ有機栽培に転向しました。
化学的なものを使わず、自然の仕組みを利用した農法で持続可能な農業を実践しています。
地域の有機農業の歴史と歩む中で、気候変動やイノシシ、シカによる被害に苦戦することも。
とくに今年は干ばつの影響で収穫量が激減し、厳しい実情が続いていますが、組合員さんからは「しっかりしたしょうがの味」と好評をいただき、有機栽培のやりがいを実感しています。